漆・蒔絵について

漆・漆器について

ウルシ科に属する植物は世界中で600種類ほどありますが、樹液を塗料として使用できるものは、《漆》の木から採ったものだけです。

漆は樹周30cm程度(10年生)の木の幹に、”かき鎌”という特殊な鎌で水平に かき溝をつけ、分泌してくる漆液を”かき箆”で採取します。1本当たりの採れる量は約200gで、1かき当たりにしますと、1gにもなりません。

歴史には、古代中国に登場し、“書経”や“詩経”には、既に漆の利用が記されています。紀元前5世紀の湖北省の楚の時代の墓からは、漆塗りの杯、楯、机、化粧箱、楽器などが発見されています。

発見されている世界最古のものは、北海道の南茅部町の垣の島B遺跡のもので、9千年前(縄文時代初期)の漆製品が見つかっています。

奈良時代になると、正倉院の御物をはじめとした、高度の技術と高い美意識をもった漆製品が製作されています。その後も、神社や寺院、貴族、武家と権力者の生活用具、武具、儀式用の諸道具として使われていきます。

17世紀以降、多くの漆製品がヨーロッパに輸出され、漆器の技法やデザインを解説した本も出版されていたくらいです。フランス王妃のマリー・アントワネットも漆器のコレクターでした。

明治時代になると、各国の万国博覧会に他の工芸品とともに出品され、いずれも高い評価を得ていました。

現代においては、食器、家具類として目にしますが、生活様式に変化に伴い、日常生活の中で一般的なものではなくなってきています。


蒔絵について

蒔絵とは、漆器などの表面に漆で文様を描き、金銀などの金属粉を蒔き付けて装飾するところから《蒔絵》と呼ばれています。

蒔絵の技法は平安時代以前から徐々に確立されていったとされ、現在、平蒔絵、高蒔絵、研出蒔絵、肉合(ししあい)蒔絵などの種類があります。

漆は非常に美しい塗料で、その上 耐久性に優れ、抗菌性も保持していますが、実はとても強力な接着力があります。

陶磁器の金継ぎが有名ですが、工業用・工芸用に接着剤として多く使われています。

つまり、蒔絵というのは、漆という強力な接着材で文様を描き、金銀粉を付着させて作る絵ということができるのです。

金属粉の種類は、丸粉、平目粉、梨地粉、平粉、消粉とあり、丸粉、平目粉、梨地粉にはそれぞれ細かさによって10から17種類に分かれています。

また、鮑貝や夜光貝を接着する“螺鈿(らでん)”の技法も併せて多く使われます。

蒔絵製品は、古くは寺社の道具、公家や武家の身の回りの品々に使われ、その後、大名道具、茶道具、印籠、髪飾りなどの装飾に多く使われてきました。

現在は、食器類、家具などが主ですが、万年筆や私も製作しているアクセサリー、珍しいところですと、ジッポー・携帯電話・ヘルメットなどにも蒔絵が使われています。